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2017年5月20日土曜日

失敗の本質

失敗の本質-日本軍の組織論的研究-(戸部良一、寺本義也、鎌田伸一、杉之尾孝生、村井友秀、野中郁次郎/中央公論新社)を読了しました。

こちらの本、オリジナルはダイヤモンド社より1984年に刊行されており、すでに33年を経過してますが、陳腐化することなく、今に通じる貴重な指摘が多分に含まれています。

読み進めていく中で、日本近代史、特に大東亜戦争をレビューすることにもなります。

失敗の抽出、共通する課題の整理、そして問題の本質へと本書は進みますが、ところどころに含蓄された示唆が述べられており、深く考えさせられます。

組織であれ、個人であれ、大きく集約すると「自己革新」がキーワードと読み取りました。

機会あるごとに読み返したい良書、オススメです。

もくじ;
序章 日本軍の失敗から何を学ぶか
一章 失敗の事例研究
    1 ノモンハン事件-失敗の序曲
    2 ミッドウェー回線-海戦のターニングポイント
    3 ガダルカナル作戦-陸戦のターニングポイント
    4 インパール作戦-賭の失敗
    5 レイテ海戦-自己認識の失敗
    6 沖縄戦-終局段階での失敗
二章 失敗の本質-戦略・組織における日本軍の失敗の分析
三章 失敗の教訓-日本軍の失敗の本質と今日的課題

<防備録>
メモ;
・目的の不明確さ、曖昧さは失敗の序章である(明確な目的、やめどき)。
・戦略と組織の特性は個々に無関係に存在するのではなく、それぞれの特性の間に一定の相互関係が存在する。
・組織の環境適応は、かりに組織の戦略・資源・組織の一部あるいは全部が環境不適合であっても、それらを環境適合的に変革できる力の有無がポイントとなる。
・ただし、逆説的だが、環境に適合しすぎても、失敗に繋がるので留意が必要;進化論では適応しすぎて特殊化し、結果、多様性が損なわれた事例あり;適応は適応能力を締め出すこともある。
・組織文化は、①価値、②英雄、③リーダーシップ、④組織・管理システム、⑤儀式などの一貫性を持った相互作用の中から形成される。

あとがきより;
・日本軍の失敗の本質とは、組織としての日本軍が、環境の変化に合わせて自らの戦略や組織を主体的に変革することができなかったことにほかならない。
・戦略的合理性以上に、組織内の融和と調和を重視し、その維持に多大のエネルギーと時間を投入せざるを得なかった。
・このため、組織としての自己革新能力を持つことが出来なかった。
・組織としての環境適応に失敗したのはなぜか?逆説的だが、その原因のひとつに、過去の成功への「過剰適応」が挙げられる。
・組織が継続的に環境に適応していくためには、組織は主体的にその戦略・組織を革新していかなければならない。
・このような自己革新組織の本質は、自己と世界に関する新たな認識枠組みを作り出すこと、すなわち、概念の創造にある。
・しかしながら、既成の秩序を自ら解体したり既存の枠組みを組み換えたりして、新たな概念を創り出すことは、われわれの最も苦手とするところであった。
・日本軍のエリートには、狭義の現場主義を超えた形而上的思考が脆弱で、普遍的な概念の創造とその操作化ができるものはほとんどいなかったと言われる所以である。
自らの依って立つ概念についての自覚が希薄だからこそ、いま行っていることが何なのかということの意味が分からないままに、パターン化された「模範解答」の繰り返しに終始する
・それゆえ、戦略策定を誤った場合でもその誤りを的確に認識できず、責任の所在が不明なままに、フィードバックと反省による知の積み上げができないのである。
・その結果、自己否定的学習、すなわち、もはや無用もしくは有害となってしまった知識の棄却ができなくなる
・過剰適応、過剰学習とはこれにほかならなかった。
・あらゆる領域の組織は、主体的に独自の概念を構想し、フロンティアに挑戦し、新たな時代を切り開くことが出来るかと言うこと、すなわち、自己革新組織としての能力を問われている

(仙台生活50日目)



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