今日は久々の江戸!北日本漁業経済学会のサンマシンポジウムに参加してきました。
主な概要は次のとおり。
【全体概要】
・近年のサンマ生産はサンマ資源の減少,漁場の遠隔化,サンマ回遊経路の変化から不良が続いている。
・生産者としては水揚量が減少しても単価が上がることで収入は何とか確保できるが,加工屋としては,原料がないことは死活問題である。
・実際問題として,加工屋では施設は復旧してきたが,加工で必要な量の半分しか原料を確保できていない。
・加工屋として日本漁船によるサンマにこだわりたいが,ないなら海外産でもやむをえない。
・サンマ原料を確保する方法に輸入や海外船の活用がある。
・輸入は増える見込みが当面ないことから国内在庫でまかなっているが在庫は減少している。
・一方,他に海外船を漁港に水揚げ誘致するなど,船凍物を取り扱うルートを作るというという方法も原料確保の選択肢の1つではある。
・海外(台湾)船はサンマの取り扱いが雑だが,指導すれば改善が見込める。
・日本はサンマの鮮魚システムが確立しているので,国内誘致で船凍サンマを扱うとなると各種の条件整備が必要となるであろう。
・日本食は世界に認められており,その文脈からも日本でメイドインジャパンとしてブランド化を進める必要があり,土台となる原料不足は解決すべき課題である。
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二平会長の挨拶 |
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パネルディスカッション |
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今年の初鰹(勝浦産) |
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懇親会の様子 |
【各論】
趣旨説明
・日本におけるサンマの漁獲量は2010年以降に減少した。
・外国漁船による漁獲が増し,未利用資源も使われ始めている。
・2015年,2016年と2年続けて1980年以降の最低水準;加工で必要な量の半分しか確保できていない。
・日本漁船から見て漁場が遠い。また、ロシア主張200海里内の問題,公海域での外国船との競合問題もある。
・加工では原料が高く,必要量が入らない→経営が厳しい。
1.近年のサンマ資源に何が起きているのか(東北水研,巣山氏)
・不漁の原因をどう解釈するか?
・近年の状況:①年間の2010年以降,資源量が減少,②特に日本に近い海域で減少し,魚場まで遠くなる,③沿岸に近づきにくい海洋条件が続く。:日本の漁獲量を決める3つの要因がいずれも悪条件であった。
・外国漁船との比較:漁場と操業形態の違いが漁獲量の動向を分けた。
・台湾は船の数は増えていないが,大型化は進んでいる。台湾船の沖獲りは確かにあるが,漁獲へのインパクトは海洋条件悪化が利いている(水温上昇とサンマ回遊経路の変更)。
・NPFCの活用,日本単独での管理は不可能である。
Q:昔は北海道に小型船,東北に大型船だった。漁船の構造を示してほしい。200海里の線引きを示してほしい。中国や台湾は日本が発表した情報を基にして魚を捕っている。情報を出しすぎなくて良いのではないか。中国は人口をまかなうため政府が燃油を出している,ロシアは牧畜できない,台湾は売り込みに来ている。
A:漁船,今は北海道でも100t超えの船がいる(小さい;20-40t,大きい100-200t)。北海道と東北の格差は小さくなった。200海里の線は差し支えない範囲で出したい。沖合の情報は難しいところがあって,国際会議では科学的な情報がベースになるので出さないわけにはいかない。実情は生データを出せの話も出ていて。各国とも獲りきって良いとは思っていない。最近は人口衛星から台湾船の動向も見ることができるようになっていて,それを見て漁業者が出漁することもある。中国船を見る機会は増えた。少なくともサンマについては,国際条約で隻数を極端に増やさないとなっているので心配はしてない。虎網によるイワシやサバの方がずっと心配である。
Q:2区から1区に補給されるというお話,どういう海況条件の時に増えるとか減るの条件を明らかにしないといけないのではないか。サンマは昔から風に強く流れに弱い。これから先はその辺がポイントになるのではないかと思う(為石さん)
A:2区から1区,現在モデル化していてもう少しで発表できると思う。定量的に示したい。海流や海峡条件は筧さんが調べている,温度の履歴検査も合わせて進めていた。データを増やして示していきたい。
Q:近年の減少と過去の減少の理由は同じなのか・違う理由があるか?
A:体長の小さい,沖合化,
80年代の減少は沖合化で似ている。90年代の減少は沖合化ではなく来遊時期の遅れである。完全一致はないが,似ているところはある
2.サンマ漁業をめぐる情勢について(全さんま組合,大石氏)
・漁海況の変化に伴うサンマ漁業の変化(漁場の遠隔化)
・ロシア水域での操業の現状(取締りの厳格化)
・公海におけるサンマ操業の検討; ロシアもサンマ漁獲が減少している為,洋上売買の検討がされている。
・東日本大震災からの復旧・復興; 代船建造により150隻程度まで回復(震災前より減ったが,新船なので漁獲力は向上)
3.サンマの水揚量および価格推移と輸出入の状況(漁業情報サービスセンター,緑川氏)
・全体水揚げ金額は10年前から横ばいで推移しているが,水揚げ単価は3倍になった。
・輸入は増えても1万tレベルで近年は5千t(輸入は限定的で極端には増えてない)。
・輸入在庫を加えた需給量は15/16年と14万tで14年から10万t落ちている。
C:経済省のIQ枠で輸入は増えないのではないか。
C:加工屋としては150円のサンマは高くて使えない。
4. 流通加工業者から見た課題(南気仙沼組合,加藤氏)
・サンマのことを季節限定の特殊性ある魚種と我々は捉えている。
・9月上旬までは鮮魚が出回り,年間の値段によってその年の加工品の量が決まる。
・水揚げが安定していけば加工屋も楽なのだが,乱降下が大きいのが悩みの種。
・2区まで日本漁船が出ていかないと成り立たないのではないかとみている(安定的な加
工ができない)。
・35万t時代はサンマいらない(猫またぎ)とまでいわれたが,今は四苦八苦している。今の11-14万t時代は200-250億,20ー25万tぐらいの水揚げが適切と思う。それより増えても減ってもダメと思う。ロシアや中国,台湾を入れると総量は一定だが,日本の割合は少ない。台湾のような沖に出ることも日本さん確保には大事なのではないか。
・世界にサンマを売り出すことを考えると,日本で生産された,日本で加工されたものをブランド化していくことが大事ではないか。日本食は世界中から認められるという文脈からも必要なことと思う。1人ではダメ,三位一体(産学官)となって進まないと勝てないだろう。日本国内の胃袋は小さくなるので,海外に打って出ないといけない。
・震災後,サンマを専門にやってきた人は廃業している(原料高,販路など)。ただし,資源が回復して25万tになれば,各設備関係の処理能力はほぼ戻っているので,漁獲が復活すれば処理できる状況にはある。
・台湾産のサンマも(個人的なルートで)買っているのだが,日本の価格が標準になる(日本の価格で台湾の価格が決まる)。台湾の魚を見ていると,ダンボールは綺麗だが,途中の処理は酷い。手づかみで,これが普通だと言い張る。そして日本と同じ価格を請求してくる。買うとか買わないとかの話になるが,最終的には日本以外に売り先がなかったので,値引きで買えていた。ただし,最近,台湾も中国やロシアに売る方が得と分かってきたようで,彼らは今後,中国やロシア向けにシフトするだろう。
・日本の輸入は増えないだろう。加工屋は減っているので,必要量も減るだろう。漁獲に関しては,今後,大きく増えることは期待できないが,増えて欲しいけど,22ー23万トンとれれば,加工屋としてはやっていける。
C:魚に対する認識の違い。日本人はサンマを食べる。外国人はサンマと言う名の魚を食べる。外国人はサンマに油を引いて焼いて食べる。
C:向こうの人はサンマが油を持つとの認識がない(中国の事例)。日本はサンマが無ければ100円でも150円でも買うが,向こうは150円だとダメ。海外ではサンマという魚とはサンマに価値を求めているわけではなく,あくまで魚の1つと見る。
C:日本的な感覚は海外には通用しない。彼らは新鮮でも古くても大きくても小さくても同じ価値観であり,魚を食べたという事実に変わりない。
C:日本の漁業の付加価値は高めていかないといけない。沿岸でとる沖合でとる,北上群など物によって違う。価値をつけて差別化しないと,認証を作るとか認知させないとダメと思う。価値がつけば120円とか150円とか 生産,卸,加工が連携しないといけないと思う。
Q:船凍品, 船上で凍結かける サイズ選別などはそんなに良いものではないとイメージを持つ。箱詰め,規格化はされるが,バラツキとかはどうだったか(台湾のもの)? 儲かる漁業など凍結限定の船もできたし沖合の話もあったが,ドバッと持って来て10g単位できっちりとして,そういう体系にはまだならないのか,船上でも10g単位の区分など,船凍品を取り扱えるのかの疑問はあるが?
A:丸得1号160g以上から2号160ー140g,・・・5号まで大まかな選別をかけてやっている。船の中で凍結前にしている。
Q:加工屋さんとして台湾産のものはサイズのばらつき問題をクリアしているとの認識で良いか?
A:結局はこちらから指導した。それによって台湾船もサンマの扱いが変わって来た(船の上で選別した)。加工屋として以前は自分たちで入荷後に再度選別していた(これは必要だった,今は精度があがった)。
Q:台湾のサンマでも欲しいか?
A:台湾のサンマは船の能力が高く,凍結の鮮度も良いので,結論としては欲しい。マイナス40度くらいでサンマの首が折れる。凍結しすぎてもダメ,イカと兼業。後は,彼らは大雑把で適当,買い取りで二等品にまで価値を下げたらちゃんとやるようになった。基本的に商社が持ってくるものはいいかげんで,原料は自分たちでみないとダメ。今の日本の199t船ではスペース的に困難。2,000tの船なら選別機を搭載できる。ただし,これをやると卸と加工屋の関係も変わるのではないかだろう。加工屋としてない年間の処理量をさだめて水揚げ状況からサンマ,イカなど一年間の原料をどう手配するか考える。ダメな場合は輸入を考える,半年分とかしか確保できないとかでダメなら別の魚種,新商品の開発にすすむ。青物ではサンマが人気は一番高い。やっていきたい。業界サイドから行政とお話ししてもよい,私としては望んでいるのだが。一番美味しい時期のサンマを食べて欲しい,その意味で旬であるは9ー10月食べて欲しい。5月の洋上漁獲は本音としてはやめてもらいたい。国際問題もあるのでダメとは言わないが,業界が一体となって考えないとダメと思う。
<総合討論>
NPFCとして国際的な資源管理をして行く。これによって管理体制を進めていかなければならないと言うことは総意として異論ないと思うが。
Q:海外の資源認識は?
A: 2014年は台湾,中国はいくらとっても大丈夫の認識だったが,最近は乱獲まで行かなくても取りすぎと認識し始めたようだ。無尽蔵にいると言う認識は持ってない。その分,マイワシやサバに回っている。(巣山)
C:一般の人にとってはサンマの開きならどれでも同じ。表示は台湾の原料で加工はここでやりましたとの表示はしている。ブランドの意味では,生産から日本にしたい。実際は世界でサンマを食べ始めている。国内にしろ,海外にしろ,メイドインジャパンをどのように差別化して行くか?に行き着く。
C:量販店さんも脂などを表示して販売したが,バイヤーさんは自然界のものはそこまで
必要ないと言い張る。りんごとかは別物と。こちらから提案しても受け入れられない。
C:今日のサンマは脂質何%まで徹底してやったが,受け入れられなかった。魚の美味しさをわかっている日本人が,昔は魚屋さんがやっていたが,知らなくなっている。今は質云々よりも値段が先に来ている。特に若いバイヤーはその傾向,値段がすべてで本当の質を求めていない売り方をしている。そこも問題である。
Q:外国船との比較で,扱いが悪い,規格が揃っていない,台湾産は漁期が長い(脂ないものもあるが),外国産がそのへんをしっかりやって来た時に日本産はどう対抗するか?
A:実際に指導した感じでは,扱いが良くなっていて,報告もする。私としては日本船のものよりは台湾船のものが良いと言うのはある。ただ,良いものではあるが,認めたくないと言うのはある。日本にはもっと良いものを作って欲しい。漁場が遠くなって鮮魚の鮮度は落ちてくるので,基本は鮮魚だが,船凍品も選択肢には入ってくる。加工屋としてはソコソコの値段なら買う。
Q:鮮魚と船凍の流通システム,これがいかに共存するか。こちらは沖のものが入ると流通が崩れると指摘している。
C:今の漁船体制としては沿岸に来れば20万トンくらいとる能力を持っている。ここが長期的変動のイワシとの違い。今の不漁,2010年から7年で長引いている。外国船の海外進出と合致している。昔は日本船だけだったから変動はあってもならせば数は確保できていた。
C:日本は南下群をとるが,海外は北上群をとる。台湾5月から,中国は6月から。ただし,漁獲の多くは8月以降なので,北上群はそんなに間引かれていない。
Q:レジームシフトの中で影響を受けたと言えるか?
A:データの蓄積が少ないので断定できないが,1区では減少しているものの,2区や3区では減っていない。マイワシほど大きな変動はないとみている。ただ,アカイカのように漁場が広がると解釈はまた変わる。
C:サンマは年中産卵,範囲もサンフランシスコまで広域なので,魚種交代の魚としての議論はできないとみている。
C:外国船が獲るようになってから減っていると言うのはやはり関係性を否定はできないだろう。
C:中国は上海と北京でもまた違うし,まともなデータは出てこない。そう言う国である。中国がサンマを獲り出したら,なんでもやりかねない。
Q:漁期末の小さいサンマの漁獲を控える方が良い?の話はどうか。
A:産卵場としてどこが大事かわからない。漁獲調査の年齢からは沖で育ったもののようだ。よって,日本近海で生まれたものかどうか確信がない。
C:日本漁船が沖までサンマを獲りに行くと言うお話。海洋大の上野さんが新しい方式を提案,イカなどと兼業にして船を300tなど大きくして,周年操業というものあった。
C:船凍品は日本の水揚げが少ない時に国内へ,多い時には海外へだすというやり方。流通を乱さないようにというのがある。
Q:原料確保に向けては段階的にでも試験的に海外船のものを入れるなど浸透させるのがよいのではないか?
A:日本の加工をどのようにして行くのか,ブランドをいかにしていくのか。陸上の冷凍処理施設は残しながら冷凍船をどうするか。漁船は船が減っても金額で確保できるが,加工屋は量がないと補填できていない。海外のものを入れることができるなら,沖用に船を作らなくてもよいが,加工屋としては日本で獲った船にこだわりたいというのもある。輸入するよりも日本船がとったものが良い。ただし,台湾船に気仙沼なりに入港させて,加工屋が納得する品質を確保するように指導することは現実にはありなのかもしれない。この方法なら大きな新船を当面は作らずにすむし,試験的に大型船による沖獲りの可能性も検討できる。台湾船をまるごと傭船するという可能性はある。国内サンマの水揚げ状況(予測)と併せて弾力的に運用できれば良い(鮮魚との棲み分けで難しい面は多分にあるが,選択肢としてありだろう)。
(仙台生活52日目)