今回は青森,岩手,福島,茨城と宮城の水産加工業114社が出展し,全国バイヤーと活発な商談がなされていました。
また,関連セミナーも同時に催されました。概要は次のとおり。
□来場者数,商品開発,商談等
何社かからヒアリングした感触として,今年の来場者数は昨年より少ない印象だが,商談件数は増えている,蒸しホヤ(殻付きボイル)は反応が良いなどのコメントが聞かれ,それぞれに手ごたえを感じているようでした。
□セミナー概要(4セミナー)
1. 「震災から6年~被災地水産業について語る」(司会:東北大,片山教授)
・輸出対応は海外市場の評価も含めどういう戦略でいくのかが大事。HACCPに加えハラルも重要,これは日本全体の鍵である。(輸出対応)
・会社の平均年齢が上がり,現状として人が入らない以上は海外に合弁事業を作る方法(20%の出資で可能)もある。企業内転勤として活用できる。(人材不足)
・サンマ,イカなど資源が取れなくなってきたが,マイワシが倍々に増えている。マイワシをいかに利用できるか。(原料不足)
・効率だけなら海外現地加工の戦略もあるが,地域経済という視点から,地元原料を使い地元で加工して世界に発信して欲しい。(地域振興)
2.
「水産物輸出に求められる認証~HACCP/MEL」(マリンエコラベル協議会会長,垣添氏;大日本水産会,山口氏)
認証としてMELとHACCPの説明があった。
・MSCに比べ歴史も浅いMELだが,今年のマリンエコラベルジャパン協会の設立とともに,認知度向上,信頼性確保にむけて仕組みを構築している。
・MELによる水産加工品への価格転嫁は当面は難しいかもしれないが,消費者とともに作り上げることで,将来的には自社利益に繋がる。
・HACCPは単独でできるものではなく,衛生管理の上にのるものである。EU-HACCPでは流通のトレーサビリティーが要件となる。安全の問題であり,事故予防に繋がるので,取得に向けては支援する。
3. 「魚と放射能 水産物の放射能調査について理解を深めるために」(水産庁,藤本氏)
水産物の放射能に関する状況を報告した。
・放射性濃度は低くなっており,平成27年以降に基準値超えの水産物は見られていない。
・風評被害への対応が大事で,誤った情報などには1つずつ丁寧に対応していく。
4.
「水産加工品の販路回復・開拓への取組」パネルディスカッション(司会:東大,八木教授)
①
水産だけでというのではなく,近くに住んでいる人との連携という視点(地域を大事に)。
②
同じ水産をやっているが,遠くにいる人と連携したというお話(同じもの,シェアを奪わない体制の構築)
③
遠くにいて水産の人ではない人たちの新しい繋がり(消費者:全体のパイを広げたりした)
国際センター |
立て看板 |
受け付け |
セミナー1の様子 |
気仙沼ブース |
選りすぐりの商材 |
みやぎ水産の日ブース |
セミナー4の様子 |
<セミナー詳細メモ>
1. 「震災から6年~被災地水産業について語る」(司会:東北大,片山教授)
各スピーカーから現状報告後,全体を取りまとめた。
(1)町田氏(八戸,ヤマヨ)
・八戸は被害を受けたが,修繕対応で回復は早く,国内坂路もそれほど失わなくなった。
・全体として設備は復旧となったが,働き手がいなくなった(=人材不足)。
・水産物の輸出について:ユネスコ無形文化遺産,日本食ブームは継続中:一方,日本の原料に頼らない日本食が増えている。
・課題:①国内生産の約半分を占める沖合漁業の奪い合いの激化(水揚げ減少,施設の充実),②温暖化による魚種の変化(多魚種への対応,魚種交代への対応),③販売競争の激化(被災地での加工業社の生産能力の向上),④販売先変化への対応の必要性(スーパーからコンビニなど)
・キーワードは比較優位生,持続可能性と連携
(2)濱田氏(大船渡,國洋)
・人材不足対策としての就労ビザで働く制度:海外の大学卒業,単価は日本の高校生並み:優秀でカルテを作るまでできる。ただし,ワーカーではなく実習生である。
・会社の平均年齢が60歳,現状として人が入らない以上は海外に合弁事業を作ることも方法である(20%の出資で可能)。企業内転勤として活用できる。
・昨年はイカなど原料がない問題発生,野菜の天ぷらに転換して凌いだ。野菜は物として見えるために選択,今後は野菜に注力し,肉・野菜・魚のコラボを作りたい。加熱品は有力な食材になりそうだ。野菜の自家栽培に発展できれば。
・三陸イサダ(ツノナシオキアミ)のコンソーシアムをつくった。来年は小さい工場が稼働予定。安くても大量にある。
(3)清水氏(気仙沼,八葉水産)
・気仙沼市は日本一水産クラスターが発達したまち:世界の海で活躍する漁船漁業,沿岸漁業と無給時養殖,漁業を支える関連産業,付加価値つける水産加工業とそろっている。
・産業再生:高度衛生管理対応型魚市場が平成30年に完成する。
・鹿折(立地21企業;ミヤカン、ホテイ)と南気仙沼水産加工施設(立地56企業;カネダイ、中華高橋)等2つの集積地
・みらい造船;4つが一緒に良いところを持ち合う。
・問題点:資源の減少,就業者の減少,魚離れ,人手不足,販売先の喪失。産学官一体で解決へ(水研機構、海洋大、東北大等)
・ベンチャーの支援;水産資源活用研究会ほか、キリン絆のリアスフードを食卓に。
・日本の食をいかに海外マーケットに繋げていくかが大事である。
(4)野崎氏(福島県漁連)
・生産者の立場から原発事故後の対応等(操業区域、検査体制ほか)を説明した。
・沿岸漁業;現在は震災前の8%の漁獲だが,H29年度は16%まで伸ばしたい。
・流通との連携が鍵となる。
・課題として,漁獲量の拡大,流通体制の再構築と風評対策が挙げられる
共通課題(論点整理)
①
輸出対応:海外市場の評価,どういう戦略でいくのか?HACCPのみならずハラルも大事,被災地と言うよりは日本全体の鍵である。
②
サンマ,イカなど資源が取れなくなってきた。すぐに回復すると言うのではないが,マイワシが倍々に増えている状況にある。マイワシをいかに利用していくか。
③
率だけ考えれば海外の現地加工でいく戦略もあるが,地域経済という視点も考えれば,地元の原料を使って地元で加工して世界に発信して欲しい。
2.
「水産物輸出に求められる認証~HACCP/MEL」
○日本の水産業の新たな発展に資するマリンエコラベル(垣添氏)
水産エコラベル誕生の経緯や水産エコラベルに対する日本の認識,今後の予定などを説明した。
・持続可能な水産物とは?:現代および将来にわたり最適な状態で水産物を利用できる状態とする(国際サステナビリティ学会)。
・マリンエコラベルジャパンの考え方:国際標準化(GSSI申請中)による信頼性の向上,日本の水産業の多様性(生物産業食文化),サプライチェーンを網羅する(CoC認証)。
・認証に向けた仕組みの構築:漁業規格、養殖規格、CoC規格
・水研機構のSHUNプロジェクト:「食べずに守る」の考え方,海外ではポピュラーな考え方となっている。
・最大の価値をつけるには「こと」が大事:輸出においてはこの「こと」価値をつけることが大事と認識している。
○水産食品の輸出のためのHACCPシステムの構築(山口氏)
・義務化の動きで進んでいる(厚生省)が,水産では輸出先に合わせという方向で動いている。
・HACCPとは:安全な食品を供給する,予防するもの,ハザードのリスクを最小にする。
・HA 危害(ハザード)分析,CCP重要管理点の造語:システムとして管理する
・アメリカの事例:衛生管理の上にHACCPを乗せる
・①水産食品安全ハザードとは?:従業員の管理、衛生管理(昆虫,毛髪,経済的不正):①前提条件プログラムで管理すべきハザード(作業環境,従業員の作法等),②HACCPで管理すべきハザード(生物的,化学的,物理的)
・②前提条件プログラムとは?:HACCPは独立したシステムではない。前提条件プログラムという土台の上に構築されると効果的である。
※みんなが苦労するところは前提条件:工場により条件が違う。
・③ハザード分析の実施:自分たちの情報(原料,包装等):製品説明書の作成,フローダイアグラム,工程説明書の作成:準備に基づいて,工程ごとのハザードを予測して埋めていく(分析)
※HACCPプランで管理するのかしないのかを選別 潜在的か重要か:重要であるか→YES,健康被害に影響するCCPたるハザードか?を判断する。重要であるか→NO,扱いを決める:イエスとNOの根拠を示す。管理手段を持つCCPが最後の砦である。
・④HACCP計画の作成;原則は個々に考えるのではなく、全体の集合体として考える。
・アメリカは実際にやっていることが要件なので寛容だが,EUは繋がりが国の管理下にあるかどうか(トレーサビリティー)を求めてくる。
・認定件数は,対米認定316、EU認定56(H29年3月現在)となっている。
・今年度,水産庁予算が当たり,HACCP取得希望に併せて講演や指導できる。要望があれば連絡して欲しい。
Q:認証をとることで価格転嫁はあるか?
A:長期スパンで見るとある。消費者がバックアップすることで企業と作ることになる。(垣添氏)
A:安全の問題であり,一度事故を起こすとイメージダウンになるが,HACCPによりこれを防げる。
3.
「魚と放射能 水産物の放射能調査について理解を深めるために」(水産庁、藤本賢氏)
・放射性元素濃度(ベクレル)×取り込み量×実効線量係数=人体への影響(シーベルト)※年間被ばく線量1ミリシーベルト以下に
・水産物の検査結果(106,725点):97%が基準値未満の結果。
・福島県データ:平成27年以降に基準値を超えた例はない。
・福島以外:平成26年8月以降に基準値を超えたものはない。
・放射性濃度は低くなっており,基準値超えは見られていない。
・スケトウダラやマダラ:世代が変わるとさらに放射能濃度は下がる。
・魚の取り込み経路:水が綺麗になると魚が取り込むCsも低下する:海面における放射性Cs濃度は右肩下がり(海水,海底土)。
・海水も餌もCs濃度は低下,新たに魚が汚染される可能性は低い。
・海底土の放射性土を魚が間違って飲んでも蓄積の影響は高くないことも調査確認済みである。
Q:水産庁として安全宣言をどのタイミングで出すのか?今のままだと自己満足である。日本は放射能に対するキャンペーンをもっとすべきである。思いを教えて。(石巻魚市場,須能社長)
A:安全宣言を水産庁だけで出すのは難しいが,復興庁や厚労省などにも働きかけをしていきたい。(藤本氏)
4.
「水産加工品の販路回復・開拓への取組」パネルディスカッション(司会:東大,八木教授)
水産とはトータルな産業で,生産・加工・流通の全てが揃わないと回っていかないことをあらためて感じた。今日は復興の前線に立つ皆さんからお話いただく。
(1)赤間氏(シーフーズあかま)
・給水活動からできた地域の絆。
・無機質培養で高品質なワカメの生産(育ちが早く色艶の良いワカメが生産できた:三陸で今も流通している)。
・ECサイト(イーコマース):直販によりより少ない原料で高い利益を得られる。全体では1%でブルーオーシャンだが,今後に期待。
・三陸若手集団フィッシャーマンジャパン創設
・地域横断アカモクプロジェクト:パッケージデザイン統一,協同で市場規模拡大へ(協業)
・大型展示会に出まくる:担当者さんが提案してくれる 。FOODEXやシーフードトレードショーはおすすめ。
・諸費者は食べ方を提案しないとなかなか買ってくれない。
・地域を超えた横のつながりが大切:日本47都道府県の銘菓を言えたらいいなぁ。
(2)阿部氏(阿部長商店)
・自社営業体制の確立→高付加価値商品の開発→海外への販路拡大(魚は売ってもらうものだという現状:生鮮・冷凍だけの仕事では難しい,将来的には海外展開が必要):消費者に近いところに立ち位置を置く。
・冷凍:付加価値が低く,大きな利益を出せない。鮮魚:委託販売,消費の現状が見えないし,特徴を出せない(相場のみが判断材料で安定性なし)。加工:消費者ニーズをリアルタイム,バイヤーの商品計画に合わせた提案ができる。魚屋でなくメーカーを意識する。
・自社加工品ブランド:マーメイド
・三陸広域連携による水産物輸出プロジェクト:SANRIKU→フィリピン、タイ、シンガポールへ。
・SANRIKUブランドコーナー,マネキン,ブランドブックの配布,地元のペーパー誌に掲載した。
・漁業-加工-流通の連携強化,競争意識から協業意識へ,「世界の三陸」を意識した世界展開。
・「三陸」の名前は世界的には知られていないことを認識,インバウンドなども含めて普及が必要である。
(3)高橋氏(女川水産加工研究会)
・販路拡大にはストーリーが必要である。
・女川町の被害の背景:人口10,000人から6,660人と3分の2に減少:水産加工は開発製造の縮小,復旧期間中に販路が崩壊した。漁業者は若者もいるが,担い手の高齢化と再開のジレンマ。
・高政にできること(地域にできること):①雇用支援,②起業支援,③交流支援,④流通支援,⑤安全支援
・女川ブランドの復幸による観光まちづくり:女川の水産加工品をブランド化,アガイン女川(againを意識)
・個社でなく女川町というブランド,「地域」としていくと戦う相手が変わる。誰と戦うのか、誰と一緒に戦うのか?かまぼこの前に女川を売る。
(4)原山氏(日本海洋資源開発株式会社)
・岩手県にて商品はできたが販路がないという失敗を経験した。
・大阪泉州広域水産業再生委員会
・本質的な問題点課題を見つけ出すフレームワーク:強み弱み機会と脅威
・産地からブランドができるという考え方の間違い→消費者が選ぶようになってブランドとなる。
・環境漁業の付加価値化で差別(大阪湾ではなく泉州鮮魚でブランド化:出荷前に日付を入れる)
・ドローンによる魚探でCO2削減に貢献(新たな付加価値)
・地元に下支えされたものでなければブランドとして売れない。
・魚食普及プログラム:子供達が地元を知らない危機感
・関西空港という拠点:関空-那覇をハブに東南アジアへ鮮魚を売る
(5)田山氏(ほやほや学会)
・ホヤは宮城県が全国の生産量の70%を占め,その内の7割が韓国向けだった。
・7,479tが国内消費,7,600tが廃棄,3,221tが韓国に輸出されていた(平成28年度):宮城県13,400t,北海道3,600t,韓国は国内生産量を4倍にしている実態→国内の販路拡大が必要と認識。
・ホヤの東北以外での認識:知らない,嫌い,取り扱えない。
・着眼点とアプローチ:①認知向上ファン層の獲得ネットワークづくり(情報発信,ホヤリンピック;アンバサダーやインフルエンサー,パクチー流行のように,②取り扱い方,食べ方の提案,栄養価の訴求:イタリアンとのコラボ,仙台デルカピターノ,お店としては新たな顧客層の開拓に繋がる,東京中野の魚谷屋(フィッシャーマンジャパン直営店)でのワークショップ事例,③新規取扱店舗の獲得(販路拡大)扱い方や小口の店舗には鮮魚を届けている企業とコラボしていく。目標300店舗,加工品の活用(冷凍剥き身と蒸し)
共通課題(論点整理)
浜を回っていた印象から人不足や原料不足などの問題が出てくると予想していたが,このセッションでは積極的な意見が多かった。
①
水産だけでというのではなく,近くに住んでいる人との連携という視点(地域を大事に)。
②
同じ水産をやっているが,遠くにいる人と連携したというお話(同じもの,シェアを奪わない体制の構築)
③
遠くにいて水産の人ではない人たちの新しい繋がり(消費者:全体のパイを広げたりした)
0 件のコメント:
コメントを投稿