モーデレーター(海洋大、中原さん)
趣旨説明
・制約条件を克服し、いわゆる「双益関係」(win-win)をもたらす連携のあり方に焦点を当てる。
・キーワードは「連携」
<説明の組み立て>
趣旨説明
本日の構成
研究会の進め方
事実確認の質問、総合討論
報告1 漁業の6次産業化連携の諸問題(海洋大、婁先生)
<6次産業か政策>
・政策の方向性、制約条件、連携の経済性と可能性
・6次産業化政策;6次産業化法(6次産業化法・地産地消法);地域資源を農林水産物に限定、事業主体は農林漁業者
・方向性1:農林漁業者による加工流通小売飲食業等への直接進出
・方向性2:農林漁業者と加工流通小売飲食業者との連携の推進
・背景;生活力点の変化、巨大な食ビジネスの空間
<動向と制約条件>
・6次産業化の動向と特徴;水産業の占める割合は7.5%
・事業進出の制約条件:①水産業とのバッティング、②共販事業とのバッティング、③経営力不足
・連携の制約条件:①連携先の不在、②連携メリットの欠如
<連携の経済性を巡って>
・スポット取引と連携の違い
・連携の経済性と原理;経済学的アプローチ①規模、②範囲
;経営学的アプローチ①戦略論、②組織論
・漁業における連携の諸形態;①垂直的連携(加工−流通−小売−飲食観光;商品づくり)、②水平的連携(同業態間−潜在的競争相手−異業種)
・仕組みのエッセンス ①産地ブランド;地域に権利、②定価取引、③産地ブランド計画生産、④明確や役割分担、⑤地域貢献
・水平的連携の事例;JF石川の朝市共同セリ
・連携に参加する経済主体の経済的メリットの明示的な認知が必要不可欠でコーディネータや行政の役割が重要。
・若者、よそ者、ばか者
報告2 地域を元気にする6次産業化〜漁業の6次産業化と組織連携のあり方〜
・双方からの視点を大切に(販売者の視点、地域の視点);行政がバランスをとる
・組織づくり;肩書きではなく役割の分担で;機能の組み合わせによる課題解決
・行政との繋がり、マスコミの活用方法が勉強できた
・市場と工場とブランドを持つ
・商品開発を通して学んでほしいこと;①訛り、②経済の流れ、③起業家マインドの育成(仕事があるから帰るのではなく、仕事を作りに帰る)
・豊漁貧乏からの脱出;獲った魚の最大限価値のあるものに!;鮮魚は1〜2日の価値、加工品は1か月〜1年以上
・全体の奉仕者(全体の奉仕者・公共性をやらない理由に→チームにならない・実践に繋がらない)と一部の奉仕者(一部から始まるが、次第に渦が大きくなる→実践を通して全体を巻き込む力に)
・ベースにある考え方;知産地笑(ちさんちしょう)
・三方良しの考え方;①売り手よし、②買い手良し、③世間良し(行政の協力が効果的);実践を進めていくと、結果的に上記の考え方につながる。連携に求められるもの。
・地域;一次産業の持続があって成り立っていく。
・元気な地域に共通のもの;①自ら歯車をまわしている、②盛んに交流が行われている、③女性が元気
報告3 漁業の6次産業化と域内連携(中央水研、宮田勉氏)
・現状で圧倒的に漁協=地域内連携
・域内メリット;地場産の価値、コスト削減、食経験と景観の価値(きれいな海を見ながら食べる)
・インバウンド消費;日本特有の食を食べる;寿司、魚介類、日本料理(観光庁2015訪日外国人消費動向調査より)
・6次産業化の事例;福島県糸島市、北海道瀬棚町、北海道釧路市、長崎県諫早市
・事例紹介;カキ小屋、マイナー魚介類
・外食から生産者へのアプローチ;イオン、くら寿司、四十八漁場など;新たな連携、新たな関係、新たな取り組み
報告4 漁業の6次産業化と行政の役割(海士町、大江氏)
・生き残るための「守り」の戦略(行財政改革;削減効果2億円)、生き残るための「攻め」の戦略(島まるごとブランド化)
・01隠岐の食文化の代表格;島じゃ常識サザエカレー
・02全国初の養殖化に成功!いわがき春香
・03鮮度・流通に悩む、離島ハンデを克服。自治体初!CAS(セルアライブシステム)導入、トータル5億円の投資(2台);地元の生産者が儲かるために。買取システム、従来の400円から800円に。
・04島生まれ、島育ち隠岐牛のブランド化
・05海士乃塩
漁業の6次産業化とビジネスモデル
・漁業の6次産業化の核心は連携にある。事例が多くないのは連携が進んでいないことの裏付け。
・水産白書による6次産業化;
・6次産業化の定義;農林水産業、農山漁村と2次産業・三次産業を融合・連携させることにより、 農林水産物をはじめとする「資源」を利活用し、新たな価値を生み出す地域ビジネスや新産業を創出すること;具体例;水産加工、水産物直売、漁家レストラン、漁家民宿、体験・観光漁業、遊漁、ダイビングなど
・6次産業化の諸相;農業の総合化→農業を基軸とした地域産業複合化→農商工連携→海業→漁村産業の多面的展開
・ビジネスモデル=ビジネスシステム+収益モデル
・ビジネスモデルの視点から見た6次産業化とは、漁村産業の多角化によって、漁業を起点とした水産ビジネスの新たなバリューチェーンを構築すること(誰が担うのか、組み替えは必要か?改善できるのかできないのか)
・6次産業化の課題;誰とつながるか、ステークホルダー間でどのような関係を構築するか、付加価値をどれだけ創造するか、付加価値をどうやって配分するか
総合討論
Q行政の役割が大きいというのが共通していた。行政の長のリーダーシップを詳しく。
A海士町の場合は、給料カットもあるが、自分から身を切るというのが下に通じた。また、やりたいことを提案したことはやらせてくれる。事例がない、お金がないなど消極的ではなく、下の意見を取り上げてくれる。
Q 連携が全体のキーワード、規模の経済性、範囲などといった複数の組み合わせがもたらす経済性なら連携の組み合わせによってどの程度変化するのか、連携の経済性の考え方について。また、連携とも関連するが、プラットフォームを指摘していて、プラットフォームは大事な要素になるが、プラットフォームの中での行政の役割を教えて欲しい。
A 水産物流通システムの基本要素;価格、コスト、リスク;効率性、安定性、機能性;資源依存論、ニーズベース資源ベース、範囲の経済と連携の経済性。行政の役割について、行政が営業した事例、お金を出すだけでなくて知恵やつながりを出す。駆け引きはパイの奪い合いで発展性はない。連携の強みは100を分断するのではなく、100を300にして分配することではないか。三分の一でも100になる。みんなが利益を生み出すのが大事なこと。行政はバランスを取るという意味で大きなことである。(婁先生)
A前提は連携の相手が見えているというものがあるが、本当は相手もわからない場合もある。困難は相手探しというところがあり、そこで行政の役割がある。そこでプラットフォームの話が出るが、中間支援組織的なプラットフォームが大きいのではないか検討事項である。あとは、コーディネータであり、相手探しから調整まで効いてくる。 (石原氏)。
Q もずく餃子の取り組み、産地をブランド、計画生産。定価購入が大きな特徴と見ていたが、残っているのか?
A 本来のバイヤーの仕事はコストを下げて仕入れることだが、連携の中ではそれぞれが儲かることが大事であると気づいた。産業が成り立つにはどうすれば良いかを考えた時に、1つの考えとして定価取引につながった。単純には1が成り立ち、2が成り立つ、そして3が成り立つためにとして。
Q 6次産業化に対する評価をどのように考えるのか?のアイデアをいただきたい。
A 1つは単価が上がった。2つには産業連関表のようなもので付加価値がどれだけあったのかをみること(宮田氏)。
A まずは、客観的、定性的、あとは関係者のアンケート。(日高氏)
A 成果がでないといけないのでまずは経済性。あとは関わった方が異業種交流したことで産業の創出に繋がったかを見ること。子供の学力増加とか。(石原氏)
A 6次産業化は小さな経済だが、これによって本業が活性化するというメリットもある。始める時の歪み、外部性。 (婁先生)
C 総合化は生業としてやっていることを起点とする。中間業者が始めた産業化は6次産業かとは分けた方が良いのかもしれない。企業が始めたものは新しいビジネスモデルとは分けた整理か。
Q 連携は重要、行政の役割が効いている。2つ質問、①漁業の6次産業化は遅れていると言われるが、水産業の取得割合は高くなってきている。これをどのように評価するか?②研究者の皆さんにより六次産業かの定義が違うように感じた。ばらつきは仕方がないが、一次産業を核としての進め方、定義としてのもの。企業において重要視されているので良いのだが、定義としてのいかがか。
A私は非常に低いと見ている。ただし、国の枠組みによるものなので、これ以外の独自に勧められている事例は含まれていない。漏れがたくさんあり、実態としてはたくさんある。ではなぜ出てこないのかの話になるが、6次産業化法の縛りがきついのではないかと思う。実際に漁村資源の数は実際にはたくさんある。海業とかは対象にしない。限定してしまう。この法律は農林漁業者が連携しているが、農商工連携は誰が主体になっても良い。何れにしても、私は6次産業化の方向性は進まなければならないと思う。ただし、制約が多いので、そこの分析は研究者の仕事である。6次産業化の定義は私はもう少し広くても良いと思う。(婁先生)
A 主体がどこかという点?いろんな意見があるが、一次産業が衰退する実情からすれば、私としてはどこから始まっても良いとは思うが、過大解釈しているところはあるかもしれない。(宮田氏)
A連携は一次産業が権利を持って初めて価値があるのではないか。取れる作物は似た地域でにかよるからという点もある。その意味でも、一次産業が権利をもつというのもある。(石原)
A未利用資源では漁業者が儲かっている事例があるし、既存よりもうけが無ければ何もしないし生産者にもうけがあるから成り立つのであろう。
Q 統合化計画が進んでいないという話はあるが、もともと水産業は加工流通と組み合わされていたので、そもそもあったのではないか。だから新しくする必要がなかったとも言える。最終製品まで持って行っての話である。6次産業化はあくまで沿岸漁業での取り組みなのだと思う。遠洋や沖合はないなら小さくなる。また、産地との距離を考えると、ビジネスは成立するのではないか。また、大企業の論理で仕組みが作られたから独自の取り組みが成立しないのではないか?
A 遠洋や沖合、沿岸とあるが、私は分けていない。むしろ、遠洋は進んでいるのかもしれない。取り組みは多い。個別経営体で実施している。なので、たぶんその辺の区分で違うということはなさそうだ。確かに漁業の六次産業化を進めると水産業になる。漁業を支えてきたのは専門家の専門性と分業。今の難しさは、利益が漁業に戻らないということ。6次産業化はその問題を打ち破るきっかけになるのではないか。(婁先生)
A それぞれの地域からあった組み立てというものがあるように思う。漁法によっては経済性を追求できないものもある。その場合は観光との組み合わせに。今までは中央から見て組み立てられたものを今からは地方から組み立てていく時代になったのではないか。(石原)未利用資源の利用と6次産業化が必要であろう。(宮田氏)
A地域の人たちをどのように守っていくかの視点で事業展開している。ストーリーや文化を、例えば昔からこんなことをしていたなど。ここにブランド化するのもよいが、島全体をブランド化する。良いものは東京で勝負する。(大江氏)
A 漁業は社会的な分業が進んでいるのでそれが独立していた。今はそれだけでは成り立たないから6次産業化の形がでてきたのではないか。生業をやっている人たちが中心になって始めることがスッキリした形には思う。その上でのビジネスモデルと考えるとよいのではないか。6次産業化の定義自体は小さいと思う。
スピーカーから
日高氏;地域全体での連携を考えるのが大事であると刺激を受けた。
大江氏;挑戦事例である。ぜひ海士町へきてほしい。
宮田氏;地域活性化の視点で6次化を捉えている。連携することによってどのような変化が起きたのか。問題の均一化。リーダー的な人が最初にいたと思う。その辺がうまく動き出したのが成功している。
石原氏;6次産業化は人材が育つしプラットフォーム型として予期せぬことが起こるし、貢献すると思う。一人だとできない理由を考えるが、連携で誰ができるかを考えるので貢献する。凡人が協力してできる地域活性化の仕組みを作ることができればと思う。
婁先生;1つだけ落とし穴がある。6次化の中で地域活性化をするというのと地域活性化を6次化でするというのは異なる。良いところを殺しかねないので、6次産業化政策の広がりは必要であろう。
メリットを作り出すことへ。
定義の問題は大事で、研究者から発信しないといけないだろう。
0 件のコメント:
コメントを投稿