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2017年11月29日水曜日

「食料生産地域再生のための先端技術展開事業」成果発表会(漁業・漁村分野)

農林水産技術会議の研究成果報告会に参加してきました。

最後の総括で山内先生が述べられていたことが心に響く。

水産は総合科学、「総合化」をどうするかが問われている。
エンドサイエンス、最終消費者が望む形へ持って行くのは実学のつとめ、これからが大事である

会場の様子











以下、会議の概要をメモ。


「食料生産地域再生のための先端技術展開事業」成果発表会
漁業・漁村分野

【宮城県】
宮城県の復興を加速する新しい高品質カキ養殖とそのブランド化のための実証研究(東北水研・神山氏)
新たな産業形成、ブランド化と後継者育成を念頭に新しい高品質カキの生産技術を開発、また、カキの品質評価手法を確立した。
・高品質カキ:①未産卵一粒カキ(シングルシード/あまころカキ:志津川湾、養成期間10ヶ月、初夏に出荷、平成29年は10万個の生産達成)、②潮間帯干出カキ(あたまっこカキ:松島湾、養成期間1.52年、特徴的な貝殻に成長、斃死が少ない、平成29年度は1.2万個を都内オイスターバーへ出荷)
・品質評価手法:官能評価可能な指標として甘み、色あいと身入りなどを採用、美味しさを数値化し、科学的に示せるようになった。
「宮城県産養殖ギンザケ」を復活させる新たな生産技術体系の取組
(北水研・黒川氏)
 生産効率化と市場ニーズに合った養殖ギンザケを供給するための開発技術を説明した。
・魚病対策:発生すると被害の大きいエイブス病の原因ウイルスを特定、簡易診断法を確立した。今後、製薬会社とワクチンを開発する。
・高成長系統の育種:宮城内水試にて3世代選抜し、通常に比べ11%大きくなる選抜種を確保した。
・市場ニーズの把握:低コスト化に向けた飼料開発(魚粉の一部をチキンミールに変更)と隔日給餌、また、電気ダモを用いることで活け締め作業の迅速化を可能とした。
復興のシンボルとなる宮城の新規水産加工食品(水大校・前田氏)
 先端加工技術の導入と低・未利用資源を活用した食品製造開発事例を紹介した。
・布ベルト式連続通電加熱装置:魚肉を連続的に加熱することでこれまでなかった形状のものを作ることができるようになった。
・すり身製造法改良による低利用サメ肉の有効利用:重曹にさらす。
・酸ゲル化技術(ゼリー食品やドレッシングの開発):日持ちの良いものができ、6割の人が美味しいと評価した。
・ツノナシオキアミからの魚味噌開発(発酵技術の適用):東南アジアの伝統的な調理法に基づく方法、調味料として利用できる。
・過熱水蒸気加熱技術と魚油乳化技術の導入:火を使わなくても焼き目を付けたり骨ごと食べることができるよう柔らかくできる。(骨を残せることで歩留まりの向上にも寄与する)
 これらの加工技術を希望する業者にはノウハウを普及して いきたい。
QDHA入りの笹かまぼこ、人の吸収率は?
A:サプリなど単体よりは魚と混ぜ合わせることで吸収率が高いとの報告がある。また、吸収にはサイズも大事な要素である(特許出願中)。

【岩手県】
岩手県の沿岸漁業・養殖業主要種の再生のために(中央水研・堀井氏)
 震災後の環境変化に対応した漁業生産技術の導入に向けた研究成果を報告した。
・いわて大漁なび:海上センサーと携帯端末を繋ぎ、リアルタイムに海況情報を漁業者等に提供できるシステムを構築した。
・サケ:稚魚の早期放流(2月頃)と短期海中飼育放流技術の検討。
・ワカメ:陸上設置型刈り取り装置の導入により3割の省力化を実現した。
・アワビ:アワビの成長が良好となる餌として、針型珪藻の培養技術を確立した。
岩手県の水産業・水産加工業の復興のための先端技術を導入した新たな鮮度保持・加工技術(中央水研・鈴木氏)
 水揚げ魚種の鮮度保持や高付加価値化に関する実証研究の成果を報告した。
・船上活締めとシャーベット氷による鮮度保持:漁業者収入が最大2倍にまで増えた。
・ゴマサバの畜養と畜養サバの高鮮度取り上げ:電気ダモの活用、定置網に入る1割程度のサバに適用、出荷調整が可能となり、高値での取引に発展している。
・高鮮度凍結機による製造:味が良く見た目もきれいで加工しやすい。凍結により、アニサキス対策にもなる。
・水産加工場の省エネ化:工場の電力消費を「見える化」して省エネ運用のためのプログラムを開発した。最大消費電力を下げることで、エネルギー消費の12%削減に成功した。

(仙台生活242日目)



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