水産庁が進める水産改革に対する八木先生の視点が水産経済新聞(2018年8月31日)の水経塾にあったので、抜粋メモ;
注目は政府の立ち位置;上位下達より「共同管理(コ・マネジメント)」
県・漁業団体にも責任と裁量
・水産政策を見直すことには賛成である。
・各国とも自国の水産政策を定期的に見直すのが普通で、例えば米国はマグナソン・スティーブンス漁業保存管理法を、また欧州連合(EU)も共通漁業政策を、それぞれ何年かに一度に大幅に改訂する。
・この過程で政策課題が再認識され、関係者が互いの考えを理解し合う。
・このプロセスは無駄ではない。
・今回の水産改革について言えば、まずは日本の立ち位置が重要なポイントになる;トップダウン方式とコ・マネジメント方式のどちらの立ち位置なのか?
【日本社会には共同管理が合う】
・日本社会に合うやり方は、このコ・マネジメント方式であろう。
・国連食糧農業機関(FAO)など国際的な場でも、日本の漁業管理はコ・マネジメントの良い手本であるとして高い評価を受けている。
・これを日本が自ら放棄すると、世界に衝撃と落胆が走るであろう。
【出口規制評価の意義】
・今回の主なポイントは、入り口規制から出口規制にかじを切ったことであろう。
【難問のチョーク魚種管理も共同作業で】
・技術的には煮詰めるべき課題も多い;チョーク魚種(Choke Species)・資源量が多くTACも多い魚種と、資源量が少なくTACが少ない魚種(これをチョーク魚種と欧米では呼ぶ)を同時に漁獲するケースがある。
・この場合、チョーク魚種のTACを使い果たすと、別の魚種はTACが残っているのにもかかわらず漁業操業が停止になる問題がある。
・魚の投棄を禁じる規制が存在すれば、チョーク魚種を漁獲しても投棄できなくなるので、この問題は一層深刻になる。
【批判は、内閣府の人選と進め方が主】
・漁業経済学会の他、水産系学会からの批判の声が多い;ただし、この批判の大部分は内閣府が設置した規制改革推進会議水産ワーキンググループのあり方からきているとみる;座長以下10名の委員が水産関係の学会に所属しておらず、専門的な論文も発表していない(1名を除く)
【漁業権問題も共同管理と紛争解決の仕組みで】
・改革案では「既存の漁業権者が水域を適切かつ有効に活用している場合は、その継続利用を優先する」との記述があるので、これが確保されるよう注視したい。
・県庁や漁業者団体にも責任と裁量を持たせることは先に述べたコ・マネジメントの仕組みそのものであり、この構図はむしろ肯定的に評価したい。
【政策の改定は定期的に】
・日本でもコ・マネジメント方式で水産改革を進め、さらには何年かに一度、定期的に内容を見直し、地域の活性化、経済効率のアップ、海洋環境や漁業資源の保全と利用をバランス良く達成する取り組みを継続することが望まれる。
(仙台生活517日)
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